満足度:85%【ランク高】
あらすじ
2人の子を持つ播磨薫子(はりま・かおるこ:篠原涼子)とIT機器メーカーを経営する夫・和昌(かずまさ:西島秀俊)。娘の小学校受験が終わったら、離婚すると約束した夫婦のもとに、突然の悲報が届く。娘の瑞穂(みずほ)がプールで溺れ、意識不明になったというのだ。回復の見込みがないわが子を生かし続けるか、死を受け入れるか。究極の選択を迫られた夫婦は、和昌の会社の最先端技術を駆使して前例のない延命治療を開始する。治療の結果、娘はただ眠っているかのように美しい姿を取り戻していくが、その姿は薫子の狂気を呼び覚まし、次第に薫子の行動はエスカレートしていく。それは果たして愛なのか、それともただの欲望なのか。過酷な運命を背負うことになった彼らの先には、衝撃の結末が待ち受けていた。
テーマは重いが、観てよかったと思える作品
東野圭吾さんの原作は未読の状態で、映画を観ました。
原作ファンの方は、観てから行った方が心情が理解できて良い、って言っておりましたが、個人的にはあまり気にしなくても良いかと思います。そこが引っかかるのは、作中冒頭と最後のシーンとなりますので、あとからどなたかの解説を読んで、後追いで理解するのもアリだと思います。
さて、テーマは非常に重い作品です。
なにせ「脳死」という、人の生と死についてのセンシティブな問題を、まだ小学校にも上がっていない子ども中心に繰り広げられるわけですから、まあ重くないわけがないでしょう。
あと、口コミ評価が低いのは、テーマが重いのも結構起因しているようです。「私には重すぎた…」みたいな。

作中常に突きつけられる主題「あなたはどう思いますか」
この映画はあなたに語り掛ける作品です。
「脳死認定・臓器移植についてどう思うか」
作中でも語られていますが「脳死」は海外では「死亡」と判断されるそうです。先進国で脳死を死亡として「選べる」のは日本を含め、珍しいそうです。 理性的に考えれば脳死判定による死亡認定は正しいと思えますが、すぐに
「あなたは、大切な人が脳死状態になったらどうするのか」
というテーマにぶつかります。自分の立場に考えてみても、自分はこう判断する、あの人はこうだろうな、あの人は違うだろうな…と、色々なことを考えるわけです。自分なりの答えを探しますが、実際の立場になったらどうでしょうね…。
「何をもって、生きているとするのか」それも人によって様々です。
ひとつの答えは、終盤に語られます。
ミステリーの部類には入れたくない
東野圭吾さんなのでミステリーに入れられがちですが、この映画の本質は人間ドラマです。
起った困難を、それぞれが善かれと思うやり方で乗り越えようとするけれど、また別の問題が起こり、それがどんどん積み重なっていく…というものと理解しました。ので、小説はわかりませんが、映画は少なくともドラマという部類の作品でしょう。
母親は篠原涼子に、父親は西島秀俊に共感できる。もはや演技じゃない感じ。
お二人ともにお子さんがいらっしゃるので、おそらくもう演技じゃなかったんじゃないかと思うのです。
篠原涼子さんは、愛情が別の感情に代わっていく様が素晴らしかったですし、日本アカデミー賞ノミネートも納得。日本中のお母さんが共感できる表現だったと思います。あれはもう演技と思えず、同じ舞台に立った子役が、ある種浮きそうになるくらいの没入感でした。
対する西島秀俊さんは、企業人としては優秀だが、女心・妻の気持ちがわからない、ちょいちょいデリカシーの無い発現をするなどの、かなり男性としては理解しやすい父親像を表現。
個人的には、あるシーンで妻から責められるのですが、その時に少し目を泳がせるんです。それまで、弱みらしい弱みを見せなかった父親が、そのシーンをきっかけに心情を吐露していくことになるのですが、あの泳いだ目をポイントに全てが代わって言った気がして、勝手にすごいなーと思ってました。

まとめ:テーマは重いが、観ていてほしい作品
というのが素直な感想ですね。超重いしその日の夕食が少し暗い雰囲気になっちゃうかもしれないけれど、 できればご家族で、または夫婦で見られると良い作品だと思います。
キャスト
公開時期:2018年11月16日(金)
上映時間:120分
監督:堤幸彦
脚本:篠﨑絵里子
原作:東野圭吾「人魚の眠る家」(幻冬舎文庫)
出演:篠原涼子、西島秀俊、坂口健太郎、川栄李奈、山口紗弥加、田中哲司、田中泯、松坂慶子
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