満足度82%:凪待ち 感想【ネタバレなし】

満足度82%:凪待ち 感想【ネタバレなし】

満足度:82%【ランク高】

前情報なしで観た方が良い映画

まず、基本的にこの映画は前情報を入れずに行った方が良い。特に予告も見る必要は無いと思う。

というのも、ネタバレを防ぐというよりも、先入観を捨ててみたほうが良いからだ。予告やポスター、チラシなどの情報は若干ミスリードあるため、フラットな頭の方が終盤のシーンをより深く感じられるだろう。何より、香取慎吾のアイドル像と本作の役柄とのギャップを感じられれば感じられるほど、この映画は面白いからという点もある。

観に行く基準としては、人間ドラマ、とりわけ人の温かみを通じての感動を得たい方には強くお勧めするとだけ言っておく。

香取慎吾いう名優の誕生作

参照: https://www.fashion-press.net/news/41036

これまで多数のドラマや映画に携わってきた彼だが、前事務所の時代はあくまで「アイドル」という立ち位置でしか「俳優」というものに携わることができなかった。

アイドルとは「偶像」だ。つまり、周囲がもつ理想のイメージが崩れれば、そこからアイドルでは無くなってしまう。とりわけ香取慎吾の場合、日本で間違いなくTOPのアイドルグループとして活動をしていたのだから、その縛りのキツさとプレッシャーは計り知れなかったに違いない。

その縛りから解放された彼の演技を始めて観たが、何とも素晴らしかった。

本作の主人公である郁男は、生きる目的をギャンブルという刹那的な快楽にしか見いだせない男。何年も付き合っている彼女に金の無心をし、同居はするが結婚はしていないというダメなやつだ。どう考えてもこれまで香取慎吾が演じてきた役柄とは真逆のキャラだ。

正直に言うと、いくら評判が良いからとは言え、鑑賞前はダメ男×ギャンブル狂のこの役柄を、彼がここまで完璧にこなせるとは想像していなかった。 ましてや、映画館で涙腺を崩壊させられるとは思ってもみなかった。

各インタビューなどを聞くと、どうもそれは白石監督も同じだったようで、撮影を始めると「ここまでできるとは思っていなかった」と絶賛したそうだ。

ただ、実は一人だけ彼のポテンシャルを見抜いていた人がいる。リリー・フランキーその人だ。「大河ドラマの主役を普通にこなした人間が、できないわけがないでしょ」と監督を一蹴したそうだ。さすが、超の付く名優は観る目も違う。

参照: https://www.fashion-press.net/news/41036

しかしまあ、香取慎吾のアーティスティックな部分の形成も、日本の芸能における、最前線に身を置き続けることができた故かもしれないと考えると、前事務所の功績は大きいであろうから、一概にその存在を否定はできないのが難しいところだ。

サスペンスではなく、人間ドラマ主体の映画

予告などでは、さもサスペンスのような描かれ方をしているが、この映画の主体は人間ドラマだ。ひとりのダメな男と、その周囲の人々がどう彼と関わり、そしてその関係がどう変わっていくのかを体験する映画だ。

中盤は正直、ハラハラもするしイライラもする。ひとえに主人公である郁男がダメなやつだからであるが、その描き方が良く考えられていると思う。

郁男の行動は、周囲から見ると全く持ってよろしく無い。しかも、言葉数が少ないため、余計に人からは何を考えているかわからないのだ。しかし、映画ではこの描き方が非常に良かった。

郁男がどうしてこんな行動をするのかわからないとハラハラさせられたシーンの後に、時にぽつりと、時に剥き出しで彼が本音をぶちまけるのだ。言葉は単純だが、心情のこもった言葉のため、観ている人間の心を揺さぶる。

特に終盤の「帰宅シーン」とだけ言っておくが、そこでは言葉すら発しない。発しないが、絆というものの泥臭い結びつきを観ることができる。そしてあなたは号泣するだろう。

人はだれかに肯定してもらえて、初めて自分を信じることができるのだ。

参照: https://www.fashion-press.net/news/41036

理解しやすいのは男性、観てほしいのは女性という映画

郁男の心情や行動は、男性の方が理解しやすいだろう。友人、それもパチンコ好きの周りにいるような、そんな男を見ていると大体こんな風なやつなんだろうな、という心情がわかる。最も一般的な女性と違うのは、言葉数が少ないというところだ。

あくまで以前習った生物学的な話ではあるが、女性は元々集落内のコミュニケーションをとることで脳が発達してきたため、もちろん個人差はあるが、会話は元々得意なのだそうだ。

対して男性は狩猟で脳が発達してきたため、空間認識や身体能力に長けるが、そういうコミュニケーションの類は苦手だそうだ。時代と社会が変わったとはいえ、何百万年もかけて進化してきたことが、そうそう急には変わらない。

個人的には、それを踏まえて女性には観てほしいと思う。

郁男は気持ちなどを「話さない」のではなく「話せない」のだ。上手く言葉が出てこないから、初めから余計なことを言わないのだと思う。単純にイライラしながら観るのも良いが、そういう視点も是非持っていただきたい。そうすることで、彼氏との意見の相違も少なくなるかもしれない(希望的観測)

舞台となった石巻へ、想いを馳せる

私は九州の人間のため、東北の震災の時はテレビの前で震え上がっていただけだった。震災後、被災地を訪れたこともあるが、本当に何もなくなっていたことに、現実感が無く、ただ茫然とするばかりであった。

本作の舞台も、実は津波が起こった後の石巻が舞台だった。ふと、頭をよぎるのは、どうしてこの映画の舞台が石巻だったのだろうかということ。

映画の中の人々は、震災による傷を抱えながらも、変化を変化と受け入れ、進もうとする力を見せてくれた。この日本で最も再生しようとするエネルギーを持つ街を通じて、おそらく主人公である郁男にその力を与えたかったのではないだろうか。ひいては、郁男を通じて、日本全国の鑑賞者の皆様に。

たまたまかもしれないが、そういう風に私は捉えたい。

まとめ:ヒューマンドラマに飢えている人へ、絶対的におススメする

今、ふと思ったが、この作品は、欠点のある家族や仲間を支え合う、という意味では、「北の国から」に雰囲気が近いかもしれない。

そのような和製ヒューマンドラマに飢えている方と、シンプルな香取慎吾ファンの皆様は是非鑑賞することをお勧めする。

あらすじ

無為な毎日を送っていた木野本郁男は、ギャンブルから足を洗い、恋人・亜弓と彼女の娘・美波とともに亜弓の故郷である石巻に移り住むことに。亜弓の父・勝美は末期がんに冒されながらも漁師を続けており、近所に住む小野寺が世話を焼いていた。人懐っこい小野寺に誘われて飲みに出かけた郁男は、泥酔している中学教師・村上と出会う。彼は亜弓の元夫で、美波の父親だった。ある日、美波は亜弓と衝突して家を飛び出す。亜弓は夜になっても帰って来ない美波を心配してパニックに陥り、激しく罵られた郁男は彼女を車から降ろしてひとりで捜すよう突き放す。その夜遅く、亜弓は遺体となって発見され……。

概要・キャスト

公式URL: http://nagimachi.com/#

監督 白石和彌

香取慎吾
恒松祐里
西田尚美
吉澤健
音尾琢真

製作年 2019年
製作国 日本
配給 キノフィルムズ
上映時間 124分
映倫区分 PG12


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