満足度86%:アンノウンソルジャー 感想【ネタバレなし】

満足度86%:アンノウンソルジャー 感想【ネタバレなし】

満足度86%:ランク高

あらすじ

ソ連との戦いに敗北し領土の一部を奪われたフィンランドは、1941年、その奪還に挑むため同国への侵攻を開始する。さらに強大な軍事力を誇るソ連軍に対抗するため50万人の軍隊を組織し、歩兵戦を中心に戦いを進める。妊娠中の妻と家族を残してきたベテラン兵士、結婚式を挙げたばかりの若者など、それぞれ違った事情を持つ4人のフィンランド軍兵士が最前線へと送り出される。

(C)Elokuvaosakeyhtioe Suomi 2017

戦争映画の結論は常にひとつ

第2次世界大戦の敗戦国であり、戦争放棄を掲げた日本に住んでいれば、様々な反戦作品を観る機会がある。

子どもの頃から「はだしのゲン」や「火垂るの墓」という、マンガやアニメ作品でも戦争の『リアル』に接することができるし、大人になってからもハリウッド映画や、有名な俳優を起用したちょっとライトな戦争映画なんかも目にするだろう。

しかし、どの作品も結末とテーマは基本的にひとつだ。

「戦争は絶対に起こすべきではない」ということ。

フィンランドで制作された本作に関しても、当然そのテーマに沿った内容であることは前提に置いておく。

フィンランドが制作したことに価値がある一作

しかして、恥ずかしながら私は、このフィンランドという国の戦争の系譜は存じ上げなかった。正確に言うと、世界史などで「ソ連と隣接」「冬戦争」という単語だけはうっすらと思い出せるレベルかな、というくらいだ。

むしろ、美女が多い北欧三国の一つ、という印象の方が強い。本作もきっちりエグイくらいの美男美女が少なくとも3名出てくる。(オグマ調べ)

本作は、そんな私たち(きっと私だけではないと信じているが。汗)に対して、フィンランド目線=大国と戦った小国目線での戦場を体感させる、非常に価値のある映画だ。

同国では何度も映画化・映像化されているらしいが、それでも本作が年間興行収入1位を獲得するほどであるから、フィンランドの皆さんの心の琴線に触れる映画であることは間違いないのであろう。

少なくとも、スタッフの制作に対する本気度は、「ワンシーンに用いられた最大の火薬量」がギネスブックで1位を獲得したというところからも伝わってくるだろう。ちなみに、爆発地から100メートル離れた地点でも家屋倒壊の危険があるというのだから、なんとも壮絶だ。

7,679km離れていても、戦争は同じ

(C)Elokuvaosakeyhtioe Suomi 2017

正確な情報かは定かでないが、日本とフィンランドは7,679㎞離れているそうだ。

そして私が鑑賞後に感じたことは、どれだけ距離が離れていようが、どんな国であろうが「戦争の悲劇は全く同じ」であるということだ。

「家と故郷を奪われる」
「若者が無駄に命を落としていく」
「少しずつ精神が壊れていく」
「無能な上官への憤り」
「愛する人と別れ」

など、言葉にするとありふれているが、この体験が人口の分だけ繰り広げられている。こんなものは人間の生活の営みから、まるっきり外れているのだ。人同士の争いは太古からある。生活の糧を得るために争うことは確かにあるが、それ以外の争いとは必要なのであろうか。

現代ではようやく、多くの人口がその争いから回避できるようになっているが、次に待ち受けているのは、人口爆発と貧困だ。その問題を目前にして、また戦争が起こらないとはっきり言えるだろうか。

本作は、改めてそのような考えを抱かせてくれる作品だ。

何が失われていくのかが、生々しく描かれる

(C)Elokuvaosakeyhtioe Suomi 2017

本作はドキュメンタリー、とまではいかないが、徹底的にリアルを追求して描かれている。特筆すべきは、戦争を通じて全ての登場人物の精神が疲弊していくことだ。摩耗していくと表現しても良いかもしれない。その様はあまりにも生々しく、彼らの表情が物語っている。

個人的に印象深いのは、作中では常にひょうきんな性格の人物が、終盤で別人かと思うような険しい顔をしている点だ。戦争はかくも人の心を擦り減らしていくことが分かる。

誰のための映画か

余談だが、好きな漫画に『鋼の錬金術師』がある。その作者である荒川弘が、取材で戦争経験のある老人を訪ねたとき、何の気なしに「戦争映画などは見ますか?」と尋ねたそうだ。老人は「そういうものは、観ませんねえ…」と返答したそうだが、作者は自分の質問が失礼に値したと、ショックを受けたという話を聞いた。

このやり取りから常に私は思っているのだが、このような戦争映画は「伝える」ためにあるものであり、すでに「知っている」人には、過去の苦難を思い出す産物でしかない。

しかし、世界大戦終結から70年以上経ち、「知っている」人が少なくなりつつある今、このような作品の価値はより高まっていると私は考える。

もっと作れという意味ではなく、ちゃんと見たほうが良い、という意見だ。

まとめ:大人の教育に良い映画

つらつらと述べたが、テーマ的には結構重い。しかし、終戦記念日も近い今、たまにはこういう映画を観て、過去の出来事に思いを馳せることも必要ではないだろうか。

また最後にもう一つ余談だが、私は福岡在住なので、こういう公開数が少ない映画に触れるのがかなり遅れてしまう。もっとどうにかならんかな…という愚痴を最後に付け加えておく。

概要・キャスト

公式URL: http://unknown-soldier.ayapro.ne.jp/

監督 アク・ロウヒミエス

エーロ・アホ
ヨハンネス・ハロパイネン
アク・ヒルビニスミ
ハンネス・スオミ
アルットゥ・カプライネン

原題 Tuntematon sotilas
製作年 2017年(日本公開は2019年6月)
製作国 フィンランド
配給 彩プロ
上映時間 132分
映倫区分 PG12

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