満足度:70% あなたの名前を呼べたなら 感想【ネタバレなし】

満足度:70% あなたの名前を呼べたなら 感想【ネタバレなし】

満足度:70%【ランク中】

あらすじ

農村で生まれたラトナ(ティロタマ・ショーム)は、ムンバイで建設会社の御曹司アシュヴィン(ヴィヴェーク・ゴーンバル)の家で住み込みのメイドとして働いていた。ファッションデザイナーを夢見る彼女は、挙式直前に婚約者の浮気で破談になった傷心のアシュヴィンを気遣いながら身の回りの世話をしている。あるとき、ラトナがアシュヴィンにあることを頼んだのをきっかけに、二人は親しくなっていく。

“踊らない”インド映画から伝わる、切実な願い

(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India

インド映画といえば「ダンスシーン」が必ずあると、遠い日本でも浸透してしまっている。私もインド映画はそんなに観ていないが、それでも「ほら!またダンス入れやがった!」と言いたくなることはしょっちゅうだ。

かの有名な、スラムドッグ・ミリオネアでも最後の最後に入れてきたので、あきらめて「もうダンスは必ずあるもんだ」という認識を持つことにした。バーガーにおけるポテト、ペコにおけるりゅうちぇるみたいなもので、基本的にセットなんだなと。

だが実は、それには様々な背景があり、かつてラブシーンが禁止されていたり、言語が多様すぎるため、万人にわかる表現として取り入れていたりと、調べてみると納得する理由が実はあったりする。

映画が一般的な娯楽として浸透しているインドでは、ダンスシーンもいろんな人に楽しんでもらうための試行錯誤の結果であり、『現実逃避』を目的とした映画に必要なスパイスだったのだ。

しかし、本作ではその表現を一切無くしている。

そこに私は、ロヘナ・ゲラ監督の『現実を観てほしい、そして考えてほしい』という意図が入っているように思う。

よくあるテンプレート的な物語のようで、実は深いテーマ

(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India

古くは「ローマの休日」、定番なところでいうと「シンデレラ」。昔から「身分の格差」を題材にしたラブストーリーは多くある。本作もその枠組みに入るのだろうが、インドの「カースト制度」が二人の障害になっていることで、他のラブストーリーと格差の壁が段違いにひどい物語になっている。

「ひとつ階級が違えば、人ではない」と言われ、身分の高い人の前で食事をしたからと殺されることが未だにあるのが、カースト制度。少しずつ変わってきているようだが、それでもまだ根強く残っている。

すなわち、階級の違う恋愛などカースト制度では認められるわけがない。それが理由で、実の兄が妹を殺すような階級制度である。気軽に結婚しようものなら、自分以外の親族にも迷惑がかかる。

愛し合っている二人が、なぜ自由に愛し合うことができないのか。そのシンプルなポイントが本作のテーマであり、監督が切り取りたかった現実である。

人間社会においては、日本でもどこでも少なからず格差はあるが、愛し合ったからといって殺されることはなく、弾圧されるようなこともない。この現代において、インドはこのままでいいのか?という問いかけがはっきりと見えるのが、本作の特徴であると言える。

そういう意味では、日本の“格差系”ラブストーリーとは、根本的に異なると言える作品だ。

あの旦那様が友達にほしい

(C)2017 Inkpot Films Private Limited,India

本作で好感が持てるのは、登場人物がみんな真面目なところだ。とりわけ真面目なのが、主人公が仕える旦那様だ。仕事はできそうだし、真面目だし、そして図抜けて優しい。男でも、あんな友人が欲しいと思ってしまう、良いやつだ。

なぜこんなことを言うかというと、これだけお金もあって、そして真面目で良いやつでも無理なら、カースト制度が残る中で格差恋愛なんて無理、ってことだ。その結末は皆さんの目で確かめてほしい。

ラストシーンで魅せる抜群のセンス

本作は、わざとらしく走り回って恋人を探すようなことはしない。わりと淡々と進んでいく。それは映画の盛り上がりに欠けると言えばそれまでなのだが、その代わり本作は静かに、でも鑑賞している皆が待ちわびたシーンで終わる。

あそこで終わらせる監督のセンスは見事だ。あれ以外の結末で終わってしまうと、どうしてもチープになるだろう。

まとめ:愛憎劇が見たい人は別の映画を。

本作は、昼ドラみたいな愛憎入り乱れる展開や、バチェラーみたいな泥沼の恋模様などが描かれる作品ではない。

インドの現実問題に対し、主人公たちがどう対応していくのかを描いた、ちょっとしたドキュメンタリーに近く、リアルな現実を理解できる映画だ。静かで、そしてピュアな恋愛模様がお好きな方にはお勧めしたい。

日本に生まれた幸せを感じながら、インドの格差がなくなることを願いつつ、そういえば自分にはそういう相手がいなかったことを思い出し、感想の締めとする。

概要・キャスト

公式URL: http://anatanonamae-movie.com/

監督 ロヘナ・ゲラ
ティロタマ・ショーム
ビベーク・ゴーンバル
ギータンジャリ・クルカルニ
ラウル・ボラ

2018年製作/99分/G/インド・フランス合作
原題:Sir
配給:アルバトロス・フィルム

KBCシネマにて鑑賞

満足度:中カテゴリの最新記事