満足度:93%【ランク超】
あらすじ
キム一家は家族全員が失業中で、その日暮らしの貧しい生活を送っていた。そんなある日、長男ギウがIT企業のCEOであるパク氏の豪邸へ家庭教師の面接を受けに行くことに。そして妹ギジョンも、兄に続いて豪邸に足を踏み入れる。正反対の2つの家族の出会いは、想像を超える悲喜劇へと猛スピードで加速していく……。
俺は、一体、何を観たんだ?

年末年始、個人的に多忙であったため、約2週間ぶりにシネマへ足を運ぶことができたのだが、今年初めて鑑賞した映画は何ともとんでもない映画であった。
本作の感想をありのままに伝えよう。
鑑賞した直後、この映画が面白かったのかどうか、しばらく理解できない自分が居た。巨大な台風を想起させる、どうしようもない物語に巻き込まれ、翻弄されたかと思えば、いきなり風雨が止み、曇天の下、残された瓦礫の残骸の上に立っているかのような感覚。
私はどうして良いかわからず、ぼうっと、しばらくエンドロールを眺めていたのだが、ふと自分の体がおかしくなっていることに気が付く。鳥肌が立ち、断続的に身震いをしていたのだ。
「俺は一体何を観たんだ?」という疑問と共に、家路につく。その間も定期的に身震いする。そして、家にたどり着いてようやく気付く。ああ、この映画は面白かったのだ、と。
もし皆さんが私と同じ感覚に襲われたなら、次にこう思うだろう。「この映画は一体何が凄かったんだ?」と。
構成の妙

本作の魅力は、何といってもストーリー構成の巧みさだろう。あるポイントをきっかけに、この映画はガラリと色を変えるのだが、後半の展開に対する、前半の雰囲気そのものがミスリードだと思える。
気が付けば、その構成の上手さにどんどん引き込まれていく。昨年では、ジョーカーやホテルムンバイを観たときに感じた、事件に巻き込まれていくような、どうしようもない状況に直面し、困惑させるタイプの引き込み方だ。
その後の展開が何となくわかりつつも、少しずつその予想を裏切っていく、ある意味とてもきれいに巻き込まれるストーリー構成だ。
ジャンルで括ることができない映画

本作を、映画マニアで有名な斎藤工はこう評価していた「ポン・ジュノ監督は、さらっと現代映画の最高到達点を更新してしまった。」と。
最高到達点と言うべきかは難しいが、確かにこの映画はそこまで思えるほど、これまでの映画になかった謎の新鮮さがある。コメディであり、社会派のドラマであり、ホラーでもあり、且つその全てが凝縮されている。
まるで三ツ星レストランが出す、極上のスープのようだ。どこかで味わったことのある旨味が重なっているのだが、それらを統合することで、これまでにない味わいが出る、というようなイメージ。
今まで見たことのあるシーンを組み合わせたかのように思え、その実全く新しいものを作りあげる、まさに奇跡的な業で作られたのが本作だ。
私は今、地下ですか?

帰路に付きながら、様々な人を観るのだが、本作鑑賞後は人の見方が変わっていることに気づく。本作は富める者とそうでない者の隔たりに関して、巧みに表現しているが、そのストーリは「人は外見どころかしばらく付き合ったとて、わからない部分が沢山あるのだ」という現実を改めて想起させる。
「彼は、本当に見た目通りの人間なのだろうか…」なんてことを思いつつ、ふと己に考えが及ぶ。「俺は今、地下にいる人と同じではないよな…」と。
この感覚は観ないとわからないと思うため、是非一度鑑賞して頂きたい。
まとめ:注意、劇薬につき。
本作は映画好きなら間違いなく観たほうが良い傑作だ。しかし、とんでもない劇薬でもある。鑑賞後、しばらく頭がフリーズすると思われるため、できるだけ鑑賞後に何も予定を入れずに観たほうが良いだろう。
しかし、上映館数が福岡は非常に少ないのだが、どうかしているとしか言いようがない。大手シネコンは一刻も早く上映を決めるべきだ。
概要・キャスト
公式URL: http://www.parasite-mv.jp/
監督 ポン・ジュノ
ソン・ガンホ
イ・ソンギュン
チョ・ヨジョン
チェ・ウシク
パク・ソダム
イ・ジョンウン
チャン・ヘジン
チョン・ジソ
2019年製作/132分/PG12/韓国
原題:Parasite
配給:ビターズ・エンド
記事画像参照元: (C)2019 CJ ENM CORPORATION, BARUNSON E&A ALL RIGHTS RESERVED
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