満足度:85%【ランク高】
あらすじ
第2次世界大戦下のドイツに暮らす10歳のジョジョは、空想上の友だちであるアドルフの助けを借りながら、青少年集団「ヒトラーユーゲント」で、立派な兵士になるために奮闘する毎日を送っていた。しかし、訓練でウサギを殺すことができなかったジョジョは、教官から「ジョジョ・ラビット」という不名誉なあだ名をつけられ、仲間たちからもからかいの対象となってしまう。そんなある日、家の片隅に隠された小さな部屋に誰かがいることに気づいてしまう。それは母親がこっそりと匿っていたユダヤ人の少女だった。
10歳のガキんちょに、僕らの情緒を振り回される映画

開始2分、やたらとハイテンションな男の子が登場してくる。それが本作の主人公、ジョジョだ。冒頭では思いもしなかったが、スタンド使いでもない彼に、我々観客はこれでもかと109分間振り回されることになる。
ラビット、という題名がついているように、主人公のジョジョはちょっと気弱で臆病だ。それは予告編でも感じて頂けると思うが、最初の最初は、そんな彼を好きになれるだろうかと少し思う。
だが、表情がコロコロと変わったり、よくわからないおバカなことを始めたり、ちょっと勇気を振り絞ってみたりと忙しないジョジョを観て、こちらもドキドキしたり、ほっとしたりと息つく暇もない。開始10分もすれば、きっとあなたは彼のファンになっているだろう。
コメディに散りばめられた強烈な皮肉

舞台は第2次世界大戦時のドイツ。と、くれば言うまでもなくナチス映画なわけだが、 「ナチスは月に逃げていた!」なんていう映画もあるくらい、今までやり尽くされた題材であるにも関わらず、本作はかなり新鮮味のある映画だ。
というのも、コメディとドラマのバランスが非常に良く、通常のパートはコメディチックに進んでいき、物語の転換となるポイントは急にシリアスになる。その振れ幅こそがタイカ・ワイティティ監督の仕掛けた本作最大の魅力であり、これまでにない新鮮さを感じる部分でもある。
また、作品を全体的にコメディチックに表現しているものの、それは「戦争など馬鹿馬鹿しい」と表現しているようにしか見えず、大人の登場人物も非常に滑稽だ。やっていることが無駄にしか思えない表現がたくさんある。そこに、本作をあえてコメディチックにした意図があると考える。
登場人物、全員素敵

本作もう一つの魅力は、全キャラクターが濃いところだ。ジョジョについては前述したとおりだし、母親役のスカーレット・ヨハンソンも頼れる素敵なお母さんを好演している。
そんな中でも私のお気に入りは、儚げなユダヤ人少女役のトーマシン・マッケンジーと、同日に観たリチャード・ジュエルでも素晴らしい演技だったサム・ロックウェルだ。
トーマシン・マッケンジーは、始めお化けのように登場してくるが、綺麗すぎてどっちかというと天使の部類に見える。また、本当は希望など見えないはずなのに、自分の絶望をジョジョに見せないように振る舞う演技が非常に良く、こちらの心を揺さぶる。
サム・ロックウェルは本当にどこに行っても良い役を演じる。本作でも、おバカな大人の代表格かと思いきや…というシーンが多々ある。ネタバレになるので伏せるが、本当に良い役、良い演技だった。
ちなみに、ジョジョの妄想友達のアドルフは、監督自身が演じているようで、何だか異質な存在感を放っている。それも何だか凄かった。
正直、キャッチコピーは好きでない

「愛は最強。」という本作の日本語キャッチコピーだが、本作鑑賞後はどうもそれが安っぽく見えるというか、作品を表す言葉として適切ではないと思える。
ちなみに、海外版のポスターには“ An anti-hate satire ”と書いている。英語力のない私が調べたところ、どうやら“憎しみへ風刺”という意味合いのようだ。確かに、映画全体を表す言葉としては、こちらの方がしっくりくる。
本作は、コメディでハートフルな映画だが、全編を通じて真剣に批判しているのは人種差別であり、本質は戦争への風刺的皮肉だ。誤解されるかもしれないが、愛情の存在を否定しているわけではない。本作は愛情の大切さや、それを貫こうとする意志を伝えてくれるが、愛=最強という物語ではないということを私は言いたい。
愛があっても何もできない状況下で、それを貫こうとする美しさや意志の尊さこそを本作は表現している。
もっと適した日本語のキャッチコピーが欲しいと思う次第だが、残念なことに自分で考えられるとは言っていない。汗
まとめ:ピュアで、ハートフルな映画に飢えている人に最適
戦争が題材なのに、どこか童話のようでもある本作は、ハマる人にはジャストフィットするだろう。
心があったまる、ハートフルな映画をご所望のあなたには是非お勧めしたい。
決して、スタンドが出てくるジョースター家の物語ではなく、大コケした日本のアレを海外でリベンジしてくれた、とかそういうものでは無いのでご注意ください。
概要・キャスト
公式URL: http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/
監督:タイカ・ワイティティ
ローマン・グリフィン・デイビス
トーマシン・マッケンジー
レベル・ウィルソン
スティーブン・マーチャント
アルフィー・アレン
サム・ロックウェル
スカーレット・ヨハンソン
アーチー・イェーツ
2019年製作/109分/G/アメリカ
原題:Jojo Rabbit
配給:ディズニー
記事画像参照元: (C)2019 Twentieth Century Fox
「ジョジョ・ラビット」映画感想:オグマの映画レビュー
更新情報はTwitterでお知らせ中!フォローはこちらから!
コメントを残す