満足度:72%【ランク中】
あらすじ
アメリカで視聴率ナンバーワンを誇るテレビ局FOXニュースの元・人気キャスターのグレッチェン・カールソンが、CEOのロジャー・エイルズを提訴した。人気キャスターによるテレビ界の帝王へのスキャンダラスなニュースに、全世界のメディア界に激震が走った。FOXニュースの看板番組を担当するキャスターのメーガン・ケリーは、自身がその地位に上り詰めるまでの過去を思い返し、平静ではいられなくなっていた。そんな中、メインキャスターの座のチャンスを虎視眈々と狙う若手のケイラに、ロジャーと直接対面するチャンスがめぐってくるが……。
社会的な存在価値が高い映画

日本で「セクハラ」が流行語大賞になったのは平成元年であるから、もう約30年も前のこと。私が社会人になった時も、すでに常用語句となっていたため、問題になるような酷いセクハラなど、もはや過去のものだと思っていた。
しかし、本作が題材としている「FOXテレビCEOのセクハラ訴訟問題」は、なんと数年前の2016年が舞台。
しかも、このまるで童貞の妄想のようなセクハラは、最大の先進国であるアメリカで行われていたというのだから驚きだ。
それもこれも、メディアという巨大な権力がもたらした歪な構造が問題であるのだが、それに対する歴史的改革を、被害者である女性たちの力によって成し遂げる舞台裏を描いたのが本作である。
そういった意味では、社会的な革命の記録としても価値の高い映画であると言える。
単純な女性上げ、男性下げの映画ではない

単純な女性アゲな映画であれば、本作の評価は世間的にもっと低かっただろうし、私も正直好きではなかったろう。
本作の特徴をあげるとすれば、以外にも淡々と、リアルに話が進んでいく点だ。
冒頭こそバラエティ番組のような表現が入るが、それ以外は基本的に本当のTV局を撮影しているような雰囲気で進んでいく。特にリアルだと思うのは、その人物描写だ。女性をただの弱者として描く訳でもなく、単純な正義の味方として描く訳でもない。
迫られた選択が白か黒かだったとしても、その判断に至るまでの様々なカラーが垣間見えることで、当時の女性たちが心の底から悩み、そして勇気を出したことが伝わってくる。
例えるなら、本作には「無血革命」のような雰囲気がある。
女性3名の演技が本当に素晴らしい

主演3名という表現が個人的には正しいと思うのだが、シャーリーズ・セロン、ニコール・キッドマン、マーゴット・ロビーの3名は、いずれも各キャラクターを完璧に表現している。
個人的には、中でもマーゴット・ロビーの演技は特に素晴らしかった。彼女だけ、2名の人物をモデルにして作り上げられた架空の人物なのだが、物語のキーを握っており、徐々に変化していく心理描写と、感情が決壊した時の演技は、観ている者の涙を誘う。
いやー、ハーレイクインと同じ人だなんて、思えないよねぇ…。
リアルであったがゆえに、ちょっと物足りない

しかし、リアルを追求したがゆえに、作品全体としては少々盛り上がりに欠けた印象だ。非常に良い脚本ではあったものの、観終わった後に感じる満足感は、何故か少なかった。
その理由を少し考えたのだが、恐らく「期待通りの面白さではあったが、我々の予測を上回るではなかった」のだろうと考える。
良くも悪くも、何かしら「裏切られた!」という感覚が無いのだ。そこが少々残念ではあった。
まとめ:むしろ、男性の方が勉強になる映画

世の女性を応援する映画であることは間違いないのだが、「セクハラ」というかなりセンシティブな内容を取り扱っているため、男性も観た方が良い作品である。
性的な冗談など、気が付かないうちに、品の無い言葉で相手を不快な思いにしているかもしれないと思うと、週明けの会社が中々怖くなってくる。自分としてはそんな自覚は無いから大丈夫…だと思いたい。
また、最後の女性たちの表情が、我々男性に向けられているものであることを、感じとった方が良いだろう。世の中、時代は変化している。いつまでも古い考えや風習に囚われてはいけないのだ。
概要・キャスト
公式URL: https://gaga.ne.jp/scandal/
2019年製作/109分/G/カナダ・アメリカ合作
原題:Bombshell
配給:ギャガ
監督 ジェイ・ローチ
シャーリーズ・セロン
ニコール・キッドマン
マーゴット・ロビー
ジョン・リスゴー
ケイト・マッキノン
コニー・ブリットン
記事画像参照元: (C)Lions Gate Entertainment Inc.
「スキャンダル」映画感想:オグマの映画レビュー
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